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< 連載第3回 >

…水曜日。
週の半ばということもあり、仕事を終えた勤め人達はたいした寄り道もせず、黙々と家路をゆく様相である。
依頼人・半田智也の元恋人・大内冴子の勤務する衣料雑貨店は、そんな日の八時を過ぎた今もなお、オレンジ色の小さな灯りをともしていた。
「今日はお客さん少ないね」
大内の同僚、藤田直子があくび交じりに呟いた。
「八時回ったしね。もう閉めて出ちゃう?」
年下の従業員たちの面倒見もよく、やさしいお姉さん的な存在として慕われている大内。大きく伸びをしながらつられてあくびをして、チラリと外に目をやる。すると丁度、派手な格好をした女が店のほうへやって来た。
「スイマセ〜ン、まだやってますぅ〜?」
これから出勤?というような女のイデタチは、この店のセンスとは少しばかり、いやそれ以上そぐわない。
「大丈夫ですよ、ゆっくりご覧になってください」
大内がそう言わずとも、小さなバッグをブラブラさせながらのんびり店内を歩き回る女――塚田京子。
閉店ギリギリまで見て回ったあと、
「う〜ん…やっぱり明日、また来るワ」
大内と藤田に明るく手を振り出て行った。
木曜日。
あともう一日乗り切れば…そんなOL達が、ちょっと帰る前に取り留めのない小さな買い物をしたくなるような日――曜日と言うのは微妙に人の心理をくすぐるものらしい。
大内の働く店も、昨日と比べれば随分と活気づいていた。
夜七時半を回り始めた頃、洋服を選んでいる二人連れに藤田があれこれ勧めていると、まだ鮮烈に見覚えのある客人が店の中へと入って来た。
「こんばんは〜」
ほぼブロンドの明るい髪に伺い知れない趣味のド派手な服――トリック探偵・塚田京子だ。
すぐに藤田が手の空いた大内に目配せする。
「いらっしゃいませ」
大内が言うと、塚田が「ハァイ」とでもいうように胸元で細く手を振ってみせる。
「昨夜は遅くに来ちゃってごめんなさ〜い!あのさぁ、あたしにピッタリ似合う地味目の服が欲しいんだけどぉ」
「ジミメ、ですか?」
動揺を何とか隠しつつも、大内が塚田に合うものを探し始める。
五着六着…と試着しているうちに気付けばもう他の客の姿はなく、またまた閉店時間にもつれ込みそうになったが、ようやく彼女のお眼鏡にかなう服が見つかった。
「ま〜た遅くしちゃった、ごめんね!でもすっごく気に入ったの。ありがとう!ホントありがとう!」
どこか憎めないような、あまりに子供っぽい笑みを見せるものだから、大内も思わずつられて笑う。悪いヒトではないらしい、そんな親しみすら湧いてしまう、どこか不思議な女性である。
賑やかな時間が過ぎ、今日来たいろんな客の笑い話などをしながら二人で店を片付け始めた。――あの派手なお客さん、また来てくれるかしら?
「ハァイ!」
――噂をすれば?
淡い色のふわりと畳んだニットの並ぶコーナーから、賑やかな着信音の携帯電話がヒョッコリ二人の前に顔を出した。
    

連載第4回へ続く・・・

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