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< 連載第3回 >

その後―――
石山と曜日は違うものの、何度か偶然を装いながら佐藤は教室付近で接触を続けた。
同じ事を勉強していることもあり、互いの連絡先を教え合うのに暇はかからない。わかりづらいところ等を電話やメールで情報交換しているうちに、二人の距離はみるみる縮まってゆく……。

「うそー?!」
「ホントだってば!」


日曜の夜。
この間TVでも紹介された、女性に人気のレストランで二人は食事をしていた。
「だってさ、美穂みたいな美人がもったいないよォ」
まわりからみれば、ごくごく普通の友人同士。しかし実際には、ターゲットとそれを落とすトリック探偵の関係…。
その二人のこんな親し気な光景も、近頃では日常的になりつつある。
「でも、いないものはいないんだもの。いいヒトいたら紹介してほしいぐらいよ」
いつもの今頃であれば、会社の上司である丸山博と浮気の真っ最中である。が、今日は娘の九つの誕生日ということもあり、それには石山も納得せざるを得なかった。
「それがね……」
佐藤は思わせぶりにニンマリと笑った。


「笹島君にも入ってもらいましょう」
再度のミーティング。前回の顔ぶれで、森山がシナリオを練り直す。
「入門と初級の合同授業が水曜日か…」
―――笹島修平、27歳。トリック探偵歴はまだ一年弱というところ。容姿も抜群、という訳ではないのだが、どことなくワンマンな雰囲気が妙に人を惹きつける。
「…じゃあ、佐藤が水曜の授業で見かけた笹島に気があるという設定で、石山を水曜の講座に誘い込む。そこで三人が接触。とりあえずの変更は以上―――」
田所がそう言って大きく頷くと、皆一斉に動き出した。
水曜日。
教室の前に佐藤の姿があった。
「ごめん、待った?」
しばらくして、息を切らせ石山がやって来る。
「ううん、さっき来たばかり…美穂、今日はなんか雰囲気違うね」
しめた、と佐藤は感じた。服装やメイクのせいか、石山はいつもより若々しく見えるようだ。
早速二人は授業を受けるため、少し広めの部屋に入った。
「―――ねぇほら、あのヒト」
佐藤の視線の先には、すでに席に着いている笹島がいる。
「あ、なんかいいカンジだね」
石山も話に聞いていた彼を実際に見て、明らかに興味を示している様子だ。
「あのさ、私恥ずかしいから、彼の隣に座って先に話しかけてくれない?」
「えっ…」
いいから、と半ば強引に佐藤は石山を笹島の隣へ押しやった。その拍子に軽くぶつかってしまったのも勿論、作戦通りである。
「すみません!このコが―――」
慌てる石山に笹島は黙って笑みをもらした。
この日を境に三人は、水曜の講座を一緒に受講しようと約束した。

連絡を取り合いなが毎週水曜日に韓国語教室に通ううち、佐藤は次第に笹島に対して積極性をみせ始めた。
そして、二人と親しくしている石山にも、なんとなく変化が表れ始めていた。
笹島はマルチデザイナーで、大きなプロジェクトを同時に幾つも抱えている――すなわち、高給取りという設定になっていた。若くして金持ち。資産家の息子で、魅力的な風貌、人格…。25歳の女性にとって、そんな条件を目の前にちらつかされれば、自然と<結婚>の文字が浮かび上がってきても不思議ではない。むしろ飛びついたら二度と逃したくないほどの好条件揃いである。
その変化に輪をかけるような出来事が、石山の身にいよいよ起こった。

「君のこと、初めて会ったときから気になってた」

ある日突然、石山の携帯に笹島からのメッセージが届いたのだった。


連載第4回へ続く・・・

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